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カランコロン―――
「へい、らっしゃい! って、なんだ、またお前か」
「またお前かで悪かったな、父ちゃん。せっかく俺が、こうして毎日このちっぽけな店の売り上げに貢献しにやって来てるというのにさ」
「ちっぽけとはなんだ、失礼な! これでも毎月黒字経営なんだぞ!」
「俺のおかげでな!」
全く、もうこのやり取り、今日で何度目だろうか。俺が12歳で見習い冒険者になった時から毎日だから、軽く1000回は超えているんだろうけど。いい加減、耳にタコが生えてきそうだ。
元々父はただのしがない鍛冶職人でしかなかったのだが、何を思ったのか俺が8歳の時に突然、この7坪ほどしかない小さなレンタルショップ『一橋マーケット』を開業したのである。初めはそこそこ売り上げが良かったものの、品数の少なさと経営のノウハウの無さから徐々に客足が遠退いていき、今や1日辺りの客数は俺を含めても10人ほどでしかない。
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