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本編
#01:再開する
ここは、どこだろう。
-こんにちは。
「……」
-気分はいかがですか。
「……」
声が聴こえる。
白い壁。白い……部屋。窓は右手の方にひとつ。対する左側にはこれまた白い扉があった。
軽く左右に目だけを動かして確認する。しんとした、完全な静寂ではないが、静謐な感じがこの八畳くらいの空間には満たされているように感じた。
-思い出せましたか。
思い出す。何をだろう。降りかかってくるかのような声。おそらくは僕に語りかけてきているだろうその声はやわらかな女性のものだ。しかしその質問の意図はよくわからない。
周りには消毒薬だろうか? それ系の薬品っぽいにおいが漂っている。意識してしまうと気が遠くなりそうなそんなにおいだ。
-あなたは長い間、眠りつづけていました。
僕の真正面は真っ白な壁だが、上の方に小さな四角い箱状のものが取り付けられている。声はそこからこの部屋に落ちてきているようだ。
スピーカー……顔の見えない相手の声に戸惑いつつも、僕は出方を伺う。
まったくの勘だけど何か普通では無い雰囲気。うかつな行動は取らない方がいい。咄嗟に目を細め、眠たげな表情でぼんやりとしてみる。
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