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彼女はにひひっと笑顔を零し首からかけたカメラのファインダーを覗きながらボクに言った。
ボクはこの場所の秘密を彼女に明かす事にした。
「この場所はもっと凄いんです。」
ボクははにかんでいたのだろうか?
彼女はファインダーから目を外し笑顔を返してくれた。
「ほー?そんな秘密を私に教えてくれるんだ?」
彼女の笑顔をボクは好きになっていた。
ボクはドキドキしながら彼女に言った。
「うん。この町の桜はボクがしっているかぎりだけど。」
彼女はうん、うんと頷いている。
「ほとんどズレなく咲いて、そして散っていくんです。そして。」
彼女の大きい目は次の言葉を急かしているようだった。
でもそれは決して嫌ではなかった。
「それはもうすぐ起こります。」
彼女所の方を見るとキョトンとした顔をしていた。
コロコロと表情を変える素敵な女性だった。
遠くで夕方を告げる放送が流れ始めていた。
「山の方を見てくださいっ、全体を見渡すようにっ」
ボクは突然彼女の手を取り駆け始めた。
川岸近くまで行き、ボクらは山の方を向いた。
その瞬間。
強い風が突然ふいた。
春を告げる風。
その風はあたたかく僕達を包み、満開だった桜たちを揺らし、花吹雪を産み落とした。
花吹雪は夕日に照らされて金色に輝きながらボクらへ降り注ぐ。
川が流れるように。
花吹雪の奔流だった。
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