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私は物心ついてから私自身とピンク色のものが好きだった。なぜなら大人が他の子より私を《かわいい》という理由で褒めてくれるから。幼稚園児のときの私はウサギのようなツインテールにしてピンクのウサギを常時身につけていた。「月夜のさくらびっと」、日曜朝7時に放送していたその当時女の子みんなが夢中になっていたアニメ。ピンク色のウサギ「チェチェ」が月の光を浴びてかわいい人間の女の子「さくらびっと」に変身し、夜になると闇の世界の入り口が開いてやってくる「ぱーぷるゴースト」達をやっつけるというなんとも子供だましなお話だ。何が言いたいかというとその「さくらびっと」になりたかったのだ、私は。ピンクの髪のツインテールでかわいらしい服を着たヒーローに純粋に憧れていたのだ。それなのに現実は非情。そんな幼き女の子に向けられるのは大人からのかわいいという褒め言葉、男の子からのアプローチ、そして女の子からの嫉妬、つまり《 ぶりっ子で嫌い》というマイナスの感情である。そんなこんなで幼少時から大人と男の子から好かれ女に嫌われはじめた私は、女の子の憧れ「さくらびっと」とは真逆の女に嫌われる女として生きることとなった。 18歳になった今、どこでそんな昔の黒歴史を頭の中で思い出しているかというと1Kの薄汚れたシングルベッドの上である。近くの1平方メートルのニトリで買ったようなテーブルには昨日食べたさきいか、ビーフジャーキー、じゃがりこの残りとビールの空き缶が5缶、ベリー系のカクテルの空き缶2缶が潰れた状態で乗っている。朝10時だというのに少し黄ばんだ白いカーテンが閉まっているので室内が薄暗い。おおざっぱに閉めたカーテンの隙間から光が溢れててそれがかすかに朝だぞと知らせてくれている。ショッキングピンクと黒いタンクトップの下着姿の私は眠気眼でベッドから玄関を見つめていた。ガチャ。ドアノブが動きギイイとドアが開いた。
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