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「キンがそういうこと言うし、アポロは恥ずかしいからやっぱ染めたい」
「えー?」
彼女は意地悪だ。
「かわいいのに」
そして私のことが大好きだ。
「意地悪だなー」
「この黒髮は私との時間の証でしょー?それにアポロみたいでかわいいじゃん。お菓子みたいで好きだけど?」
「私は桜色にしたいのー」
「さくらびっと色でしょ?」
またにやにやしながらこちらを見る彼女。二人の黒い時間の部分をなぞる。
「うるさいなー、…トイレ行きたい、これはずしてよ」
私が右腕を軽く降るとがしゃんがしゃんと金属音が鳴る。《これ》とは右手首についた手鎖のことである。それが右手首と繋げているのは安っぽい白の塗装がしてある金属のベッドフレーム。
「ああ、ごめんすぐ外せばよかったね」
キンは薄いTシャツの内側に入ってるネックレスを引っ張り出した。ネックレスのチャームがこの手鎖の鍵だ。まるでおもちゃみたいなちゃっちいもの。でもこんなものでも私の自由を握る大切なものである。その鍵を手鎖の鍵穴に入れ回すと、かちゃんと軽い音がして私の右手首は自由の身となった。
「ありがとう」
立ち上がると少しゆらっと眩暈がした。昨日の深夜から横になっていたのだからしょうがない。
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