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キンはベッドに座りテレビを観ていた。いつの間にかカップヌードルのカレー味を啜っている。
「んん?」
「久しぶりに外に出たい」
先程よりも大きく主張する。
「いいけど、どこ行くの?」
「どこでもいい、公園でもいい」
「公園?ババアかよ」
キンは馬鹿にするように吹き出した。
「とりあえず外。外に出たい」
ずずっと麺を啜ると白いTシャツに茶色い斑点がつつっと付く。本人は気にしてないようだ。そして行儀悪く箸でテレビを指す。割り箸の先は茶色く染まっていた。
「『さくらびっと』やってるけどいいの?」
「へ…?」
テレビの方に視線をやるとそこにはかの憧れのヒーローがいた。
『大変!みんなが黒くなって動かなくなっちゃった』
『これは闇の世界の仕業ね!さくら舞え!さくらびぃぃっと!』
軽快な音楽で月の光を浴びて変身するヒーロー。
ああ、懐かしい…懐かしいけど…
ぷつん
気づけばテレビのリモコンの電源ボタンを無意識にぎゅっと押していた。観たくなかった。目を丸くして顔でこちらを見やるキン。
「…観ないの?さくらびっと」
「これ映画で何回観たことあるからさ、もう飽きちゃった」
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