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自分でもわかる愛想笑い。私の笑顔はどう考えても引きつっていただろう。顔の筋肉が不自然に硬直していた。リモコンをベッドに放り投げる。ポスッ。黒いリモコンが一回小さく跳ねて落ちる。胸がきゅうっと締め付けられていた。
「そんなことより外行きたいな」
私は口早にそんな我儘を言った。
『大変!みんなが黒くなって動かなくなっちゃった』
その言葉が心にまとわりつく。私は無意識に頭のてっぺんをなぞっていた。
『今日はキンとお出かけ』
ピンクと白を基調にしたワンピースを着てスマートフォンを上に構えて自撮りした。共有ボタンを押して可愛らしい言葉を添えて投稿ボタンを押す。
私とキンは手を繋いで近くの公園を散歩していた。外での行動の際はいつもこうして手を繋ぐのが暗黙の了解なのである。
《離れないように》
こういうと聞こえはいいが、実際のところ外で手鎖を使うのはさすがに憚れることへの対応策であるのだ。
「空気が美味しい」
心地よい風が吹き?を撫でる。
「それは私への当てつけ?」
右側のキンは前を向きながらにやにやと嫌味を言う。
「当てつけ」
私は真顔でオウム返しをした。
公園を散歩した後、昼食を食べに近くのショッピングモールへ足を運んだ。ショッピングモールの雑貨屋の前を通り過ぎようとしたとき、見覚えのあるさくら色のグッズがたくさん固まって置いてあるのが見えた。
「アポロ、さくらびっと」
「あ」
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