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 自分は結構、幸せな人間だったと思う。  ……昨日までは。  中学を卒業して、近所のいとこの事務所で仕事をさせてもらって、二十四の時に 知人の紹介という形で、今の主人と知り合い、次の年に結婚した。  わたしの歳の女なら、特に早い訳でもなければ、遅くも無い。  主人は、小さな工場の主任を勤め、性格は真面目。趣味は釣りと競輪くらい で、映画鑑賞と観劇が趣味のわたしとは、話が合わなかったが、五歳上でおっ とりとした主人とは、特に喧嘩らしい喧嘩もしなかった。  そんなわたしと主人の間に出来た一人娘の悠子は、結婚三年目に生まれた。  悠子を出産した後、次の子供を望んだが、一度流産してしまった後、どうして も妊娠出来なかった。  現在なら、色々な治療法などがあるらしいが、わたしの時代には田舎だった という事もあって、聞いた事がなかった。  長男を熱望していた姑に「女の子なんかいらないのに」とか「お前は役立たず の嫁だ」等、言われて鬱気味になった事もあった。  そんな時、「悠子一人いればいい」と言ってくれた主人を、わたしは今も忘れ ない。相変わらず姑とは気が合わないが、優しい主人と悠子がいれば、わたし は幸せだったのだ。
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