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 一人娘の悠子は、大事にしすぎ、少々過保護気味な感じはしたが、わたし達 を困らせる訳でもなく、悪い友達と付き合うわけでもなく、顔も性格も主人に似た ごく普通の娘だった。  地元の高校を卒業した後、今住んでいる町から、電車で三十分位の場所にある 短大へと進み、毎日、元気に通学している。  毎月こづかいを与えているが、友達に誘われたと言って、短大の近くにある、 カラオケボックスで、週三~四日程働くようになったが、今時、アルバイトをしてい ない学生の方が、少ないだろう。友人と一緒だという事もあって、わたし達は、得 に反対はしなかった。  その頃だろうか……。  週に何回かのバイトで、遅くなる事が増えたのは。だが、悠子は遅くなる時は、 必ず家に電話をよこし、外泊もせずに帰って来ていた。わたしも主人も、悠子を 信じていたのだ。「帰りが遅くて電話もよこさない」と近所の友人が愚痴を言って いるのを聞くたび、うちの悠子はなんて親思いのいい娘なのだろう――と、内心 ほくそえんでいたものだ。  だから、驚いたのだ。  いきなり付き合っている人がいる、と言われた時は。だが今まで男の子と付き 合った事もなく、多少心配もしていたので、主人はいい顔しなかったが、わたしは 嬉しかった。  家に連れて来て、紹介したいという悠子のお願いに、わたしはぜひ連れて来い と悠子に言った。  バイト先で、知り合ったというそのボーイフレンドに、わたしは興味があった。  どういう男だろう?やはりまだ学生なのだろうか?バイトをしているのだから、 社会人ではないだろう。髪は長くしているのだろうか?今の男の子は、女の子み たいに、髪を染めたり、ピアスをしているが……。まじめな学生だといいのだが。  わたしは、そんな風に、色々想像した。  そして、来週の土曜日なら、主人も家にいるから……という事で、その日に悠子 のボーイフレンドと、会うことになったのだ。
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