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どうやら私は いつの間にかうつらうつらしていたようだ。どれ位時が経ったのだろう、ザワザワと気配を感じる。
少し離れていたはずなのだが障子のま下にいた、気配は障子の向こうの廊下からだ、はめ込まれたすりガラスの向こうに何やら複数の動くものがある、何か言っている、話し声なのか 聞き取れないが確かにひそひそと話している。今日は夜までこの家には私一人のはずなのだが。
妙な汗が身体をつたう、暑さのせいだけでは無いようだ。なんだか胸が苦しい、いや苦しいと言うよりも重たい、何者かに胸を押さえつけられているような感覚だ、私はたまらず胸の上にあるものを掴んで押し退けた。
咄嗟に私は覚醒した、私は今 掴んではいけないものを掴んでしまった。それはじっとりと冷たく生々しく柔らかいものだった。
とその時、押し退けたものが私の胸の上にドンと落ちてきた。
それは見たことのない冷たい他人の腕だった。
( 百目奇譚夏号 特集百目怪談 『 他人の腕 』より )
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