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ああ、本当に、なんて可愛らしいんだろう。
一緒の席にいた女の子が『友達』だとは言っていたものの、上原くんの表情と、一人で立ち上がってる様子を見ると、それほど近しい間柄ではないことは見受けられる。
そして、彼の手にしたトレーを見ると、いつものメニューとは違ってたらしい。何を食べたのか気になるところだったが、さっさと返却口へと戻してしまっていた。
上原くんともっと話をしたかったのに、こういう時に限って、忙しくなる。
もう帰ると言う上原くんに、また来週と挨拶をしてカウンターの中に戻る。上原くんはチラリと私の方を見て小さく会釈をして店を出て行った。
ああ、その時の微笑みが、私の苛立ちをどれだけ癒してくれたことか。
「はぁ……早く、戻りたいわ」
「え?何か言いました?」
不意に零れた本音に、バイトの男の子の焦ったような声。私は「なんでもないよ」と笑顔を貼り付けて答える。
ああ、彼が上原くんだったら……警備の仕事じゃなくて、うちでバイトすればいいのに。
彼だったら、うちの制服も似合うだろうに。上原くんのカフェエプロンをした姿を妄想しながら、私はもう一度、大きくため息をついた。
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