一杯目

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 自分の状況に頭を傾げながら、レジで会計をしている間、普段は気にもかけなかった彼の胸の名札に目を向ける。  カタカナで『ホワイト』と書いてある。  横顔を見ると、その名前の通り、白くて美しい肌に、長い睫毛、青い瞳に見惚れてしまう。 「はい、番号札三番でお呼びしますね」 「は、はい」  慌てながら差し出されたトレイを受け取る。カフェオレと「三」と書かれたプラスチックの番号札。  俺は、いつもの壁際の席へと向かう。この時間は、あまりお客さんもいないから、テーブル席に座ってもいいのかもしれないが、俺はついつい壁際のカウンターの席に座ってしまう。  壁と向かい合いながら、俺はバッグの中から携帯を取り出し、電源を入れる。  そこには、母さんと高校二年の弟の征史郎からのいつもの『いってきます』というメッセージが届いていた。  俺の勤務時間のせいで、二人と顔を合わせられるのは夕飯の時だけ。毎朝、このメッセージを見て、やっとホッと一息つける。
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