一杯目

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 俺は、空いていたパイプ椅子に座って、帽子を脱ぐ。  被りっぱなしだから、普段はツンツンと立っている茶色の短髪もへたってしまっている。 「やっぱ、防災センターの中、あったかーい」 「西山はどうした?」 「トイレ寄ってます」  夜間の巡回は二人で回るんだけれど、防災センターに入る前に、西山さんはトイレに寄ってくると言って別れた。  西山さんは俺よりも三つ年上のニ十五歳。  俺みたいな小柄なのと違って、まさに柔道部の重量級、という感じ。いかつそうに見えるけれど、猫好きでけっこうカワイイところのある人だ。俺も猫好きだから、休憩中は猫の話ばかりしている。
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