一杯目

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 ショッピングモールのスタッフオンリーの通路は、薄暗い電気がかなり広い間隔で置かれているのと、動いている人に反応して点灯するタイプ。だから、巡回で戻ってくるときは、人が通っていないから、薄暗かったりする。  ここで警備員のバイトをするようになって、半年近くなるけれど、いまだに慣れなくて、時々、ビクッとしてしまう。それを先輩たちに見つけられては、揶揄われてしまうのが、毎回、悔しかったりする。今日は運よく、誰にも見られなかった。  俺の勤務時間は夜の九時半から、ショッピングモールのオープン直前の九時半まで。  冬場の夜中に自転車で向かうのは、かなり寒くてキツイけど、この辺の時給の相場ではかなりいい方なのと、家から通えるのもあって、ここでバイトを続けてる。  雨の日の夜は、仕事から帰ってきた母さんが軽自動車を出してくれるけれど、できるだけ母さんに面倒はかけたくない、と思う俺。 「ううー。さみー!」  大きな体を寒そうに丸めて、西山さんがドアを開けて入ってきた。
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