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しかし、実際にはどう頭を捻っても何も出来ない。忠志はケンタを如何にもしてやれない焦りで胸が押し潰されそうだった。そんな気持ちを抱えたまま期末テスト一週間前を迎えていた。
生徒はテスト勉強のためクラブも活動停止になり一斉に帰宅する。忠志も早々に下校した。バス停近くで篤眞の自転車に出くわした。
「篤眞」忠志は大きな声で呼び止めた。篤眞は自転車を止め、振り向き手を挙げた。篤眞は自転車を降り忠志と歩きはじめた。
忠志はケンタのことを篤眞に相談しようと思い咄嗟に篤眞を呼び止めていたのだ。でも上手く切り出せない。暫く何も話さずに二人は歩いた。
「鶏のケンタだけどさ、食べないで欲しいんだけど…ダメかな?」
忠志は唐突に横で自転車を押して歩いている篤眞に言っていた。「何?」聞きとれなかった、という感じの顔になり耳からイヤホンを取った。何を言われたのか気付きハッとし、顔をしかめ立ち止まった。
「ケンタのことかよ」篤眞はやはり、という顔で答えていた。忠志はただ立ち止まったまま、もう一度同じことを言う勇気が出ない。
「一度、忠志に注意と言うか意見しようと思っていたんだけど、ケンタのことをさ…」「ダメかな?」忠志が食い気味に話してきた。
「…」篤眞は話すのを止め自転車を押して歩き出した。
「…ダメも何も、無理だな、そんなの。分かってんだろ、じゃあ」素っ気なく篤眞は自転車に乗って忠志を残して行ってしまった。残された忠志は一人とぼとぼと家に帰っていった。
次の日、忠志が教室で席に座っていると隣のクラスの篤眞が教室入ってきた。何処か怒っているような顔つきで。
「親父に鶏のことを訊いたら、家の鶏は全部食用だって…特別な鶏は一羽もいないってさ」いきなり強い調子で一気に捲し立てるように言った。
「えっ…」忠志は言葉が見つからない。それだけ言うと篤眞は忠志の答えを待つことなく踵を返してサッサと教室を出て行ってしまった。以来、ふたりの関係は何となくぎくしゃくした。期末テストで一学期が終わり、ちょうど夏休みになり二人は遊ばなくなった。
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