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…自宅のベランダの屋根が飛ばされ空高く舞い上がり、蝶のように宙を舞う。手元から一羽の真っ白な鶏が飛び立つ。地面スレスレを低く飛び、白い羽が散らばる。舞っていたベランダの屋根が急に地に落ちる。目の前にゆっくりと真っ赤な血の緞帳が垂れ下がってくる…。 「…また同じ夢、か」忠志は夢を見ていた。 家の外が騒がしい。何人もの騒ぐ声が聞こえてくる。忠志は浅い眠りと夢から目覚めた。 かなりの寝汗を掻いている。シチュエーションは少し違うが同じような夢を最近何度も見る。 気付くと眠りを妨げる風の音や雨が雨戸を叩く音は聞こえてこない。どうやら吹き荒れた台風は過ぎ去ったようだ。風雨は収まっている。物凄い台風だった。特に風が強かった。 まだ雨で濡れている雨戸を開ける。眩しい朝日が忠志の顔に照りつけた。 「…うっ、眩しいっ…」日差しの照り付け方が何時もと違う。見上げるとベランダの屋根がない。 「そんな…如何なっているんだ、これは…」驚きで忠志は声を挙げた。よく見るとベランダの屋根だけでなく6本ある金属製の支柱も無くなっている。台風一過の青空が丸見えだ。 何が起こったのかすぐには分からなかった。考えを廻らせ、どうやら昨晩の台風で飛ばされてしまったのだと。ふと、さっきまで見ていた夢と同じでは?忠志の寝ぼけた頭は目の前に見えている現実と夢がごっちゃになり混乱した。それにしても金属の支柱ごととは、台風の猛威に忠志は只々愕然とした。
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