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 忠志はベランダの屋根がその辺に転がっているのでは、とキョロキョロ庭を見渡した。屋根は何処にも見当たらない。それらしき破片すら落ちていない。 「そうだ、夢ではベランダの屋根は空高く舞い上がり飛ばされる…」近くに見当らないということは、そういう事になったのか?何故か忠志は、まだ夢と現状を照らし合わせている。 「…酷いな、これは…」忠志の家と道を挟んだ向かいの農家が騒がしい。そこから何人もの声が聞こえてくる。 その農家は同級生、篤眞の家だ。小学生の頃は何かにつけ忠志は良く遊びに行った。中学校は違ったが、この春から同じ県立高校に通うようになっていた。 「…屋根が、あんな所まで飛ばされるとは…」忠志の父の声も農家から聞こえてきた。どうやら台風で何かの屋根が飛ばされたようだ。 「えっ、うちのベランダの屋根?」あり得るのではと。夢でみた情景に似ている。夢が現実に。そう思うと心臓がドキドキし始めた。確かめに行こう。忠志は踵を返した。
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