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 数日後、忠志は何時ものように鶏小屋を覗き込んだ。ケンタは変わらず元気に歩き回っている。しかし、ケンタと何故だか声を掛けられなかった。 ところが、ケンタの方は忠志のいる金網の処までスタスタとやってきた。左顔を初夏の日差しでキラキラ光る金網にくっ付けるようにして忠志の顔をまじまじと見つめた。訴えるような眼の玉がギラリと光った。 『ココカラ…タスケテ…』 「えっ…」今の声は?確かに声が忠志には聞こえた。周りを見回した。誰もいない。篤眞も今は傍にいない。 『ココカラ、タスケテ!』 再び声が頭の中に入り込んできた。今度は前よりも強い調子で。 その声はケンタだ。ケンタが忠志に話し掛けてきたのだ。そのことに気付いた忠志は驚きで眼を丸くし、金網越しに凝視しているケンタの眼を見返した。ケンタも忠志の顔を見詰めたままだ。 ケンタが鶏小屋から助け出してくれと頼んできたのだ。忠志はそう受け止めたのだった。 「如何かしたの?」眼を丸くしている忠志に、鶏小屋の横から顔を出した篤眞は怪訝そうに声を掛けた。
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