それから

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それから

「で、結局お前が負けたんだろ。確認するまでもないけど」 ヨリコとのテスト対決のときから一年がたち、僕は修学旅行の男部屋の隅っこで、親友と呼べるような男友達と話していた。 「ああ、惜敗だ。僕は死に物狂いで勉強したおかげで、クラス2位の成績をたたきだした。でもヨリコはそれを上回り、なんと学年1位の成績だったんだ。勝てるわけがなかった」 「よっぽどお前と風呂に入りたくなかったんだな」 「まあな。でも僕は煮え切らない思いだった。だって、前回のテストと同じくらいの点数をヨリコがとっていたら、僕は勝てていたんだ。それなのに、今回に限って本気を出してくるなんて大人気ないじゃないかって彼女に愚痴をこぼした。 『負けは負けでしょ。男のくせにみっともない』って彼女に言われて、しぶしぶ僕はグッチの財布をプレゼントした。ほとんど僕の全財産をつかったよ」 「でも、結果的によかったじゃないか。それを機会に勉強するようになって、今ではクラス上位の常連だもんな」 「ああ。グッチの財布をプレゼントしたあとに、ヨリコに言われたんだ。『私とそんなに風呂に入りたかったら、こんな勝負じゃなくて実力で勝ち取りなさい』って。こんなしびれるようなセリフをいう女はそうはいないぜ。僕はいつか、勉強だけじゃなくて男として彼女にふさわしい人間になるんだって、決めたんだ。そしていつか、ヨリコに認められたら、一緒に風呂に入るんだ」
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