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物怖じのしないその転校生は生徒会役員と仲良くなったらしい。
本人いわく友情との事だが、傍目に見ているとそれは明らかに友情ではなく恋情を含んでいた。
生徒会役員、風紀委員長、それから一匹狼と言われていた不良そんな学園の人気者達が一人の転校生を取り合っていた。
転校生から伸びた真っ白な糸は生徒会長、副会長、書記それから風紀委員長そんな取り巻きの指から伸びる糸とごちゃごちゃに絡み合って、一つの塊の様になっていた。
普通はすりぬけてお互いに干渉し合わない糸であるが、時々こうやって絡まってぐちゃぐちゃになっている時がある。
本人の体質なのか別の何かなのかは知らない。
でも、こうやってごちゃごちゃとなってしまった糸の関係者は、先の見えない恋にだんだんと取り込まれてしまう事は良く知っていた。
だが、あの人の糸だけはそこに入ってはいなかった。
そっと様子を見ていると、絡まった糸そこを切なそうに見た後、そこに触れようとしていた。
手は糸を触る事も出来ずに空をきった。
もう一度、自分の糸を触ろうとして失敗する。
それから、あの人は自嘲気味に笑ったのだ。
ああ、彼は転校生が好きなのだと思った。
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