2話

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今は、実家でもストーカー被害にあっているだとか、DV被害にあっているだとか犯罪を犯した親族と縁を切りたいだとか。そう言った切羽詰まった状態にある場合にしか切っていない。 まあ、そう言った意味では効果はそれなりにある様だから、この糸に少しは意味があるのかも知れないが……。 だから、この人が望めば、彼の糸を切ってしまうのもありなのかなと思った。 実家に帰れば、俺の糸の先が無くなっている事に気が付いた家族に酷く叱られるだろうけど、それはまあいいやと思った。 俺と彼を繋ぐ糸を切って、俺の手から伸びるその先をその後もどこかに結びつけておきさえすれば。それで今までと何も変わらない。 「頼めば、切ってくれるのか?」 「うちの家族に内緒にしてくれるのなら。 ただし、準備がありますから今日直ぐにっていうのは無理ですけど。」 本当は必要な準備等無い。 俺は鋏でしか切れないが、要はイメージだけの問題だ。父は人差し指と中指をハサミの様に見立ててチョキンと切ってしまう。 だが、今切ってしまうとその瞬間俺の手から伸びる糸も先を失う。 いつもは引っ掛けてあるだけのそれをどこかに結びつけなければならないだろう。 「それを誰かに結び付ける事は?」 出来なくはない。 「それはお断りしたいです。」 「何故?」 「転校生の絡まった糸に結び付けるのは俺には難しい。」     
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