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3話
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俺の先から伸びる糸を忌々しく見つめた。
先ほどの訪問者がやっていたように糸に触ろうとして、そのまま手は突き抜ける。
何度目か分からないその状況に、舌打ちを一つした。
今までこれが誰の目にも見えない物で、自分自身、気でも狂ってるのかと思った事が、それこそ何回もあった。
あいつは、これが見えると言った。それからそれを触って見せた。
糸をそっと摘む様に撫でた光景が、いつまでの脳裏から離れない。
糸によって恋愛の全てが決まらないという事は、知っていた。
事実、俺の両親の糸は全く別の所にのびている様だった。
だからといって子供の目からだが、夫婦仲は良い様に見えた。
あいつも冷めた目で、少しきっかけを作れる程度のものだと言っていた。
それに救われたのも確かだった。
誰にも見えないこの糸に。がんじがらめにされそうになっていたのだ。
やっと、冷静にこの糸と向き合えるかも知れないと思った。
すると、この糸の先に誰が繋がっているのか興味を持った。
今までは、もし、繋がっている先の人間に出会ってしまったら絶望しかないのではないかと、あえて探さない様にしていた。
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