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糸は4階にある部屋へと続いていた。
ドアの右横にある入居者の名前を確認する。
山田正治、亘理俊介と書かれたプレートを見たが知っている名前では無かった。
この二人のうちどちらかの指と俺の指は繋がっているのだろうか。
口はカラカラに乾いていた。
落ちつこうとゴクリと唾を飲みこみ、インターフォンをそっと押した。
朝早すぎる時間で迷惑をかけるかも知れないという事はその時頭には無かった。
暫く待つと、そっとドアが開いて訝しげに外を見ようとする瞳と目があった。
その人物に驚く。
俺がこの糸の先を探すきっかけになった、縁結び神社とやらの息子だったからだ。
だが、こいつでは無い。
最初に職員室であった時にも、その後説明を受けた時にも糸の相手では無かった。
それはしっかり見た。
胸騒ぎがした。
嫌な予感がして、無理矢理部屋に入ろうとする。
きっとこの糸はこいつの同室者に繋がっている。なら、何故言わなかったのか。
イライラする。
「ねえ、入ってもいい?」
言葉だけ取ればいつもと変わらなかったものの、出た声は酷く低い。
「会計様、何故朝っぱらからこんなところに?」
分かっているはずなのに、こいつはトボケた事言っている。
「いいから、通せ。」
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