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脅した様な、いや"様な"はおかしい。事実、俺は脅している。
睨みつけ、僅かな隙間から、即こいつの胸元をドアに打ちつけるようにこちらへ引っ張る。
ゴンという鈍い音がした。
「……分かりました。問題だけは起こさないでください。」
暫くの無言の後、絞り出すような声で中に通された。
通された先には左右対称に二つのドアがあった。
俺の指から垂れる、糸は左側の部屋から出ていた。
しかし、そのドアからはもう一本別の糸が伸びていた。
誰か来ているという事だろうか。
それを確認しようと、後ろから来た男に聞こうとして、目を見張った。
もう一本の糸、俺と繋がっていない方の糸はこいつに繋がっていたのだ。
「来客が君の“運命の相手”?」
「は?……ああ、まあ。」
歯切れが悪い。
こいつは、あんな風に俺に説明しておきながら、自分の運命の相手に特別な感情でも抱いているって事か?
俺と同じ位滑稽で、いっそ笑えてくる。
どちらにしろ、顔を見ない事には始まらない。
待たせてもらおうとすると、反対側のドア、右側から一人の男が出てきた。
「亘理、おはよう。って会計様!?えっ!?なんだこれドッキリか?」
亘理、こいつはそんな名前だったのかと思う。
どういう事だ?
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