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部屋に戻るろうかと一瞬思ったが、こいつをプライベートスペースに入れる気にはなれず、生徒会専用の温室へと向かった。
幸いな事に副会長もおらず、無言のまま付いてきた亘理に視線を投げる。
無表情でそこに居るこいつに、無性にイライラした。
視線を下げると1本だけの糸が俺の小指と亘理の小指に絡んでいる。
亘理は何も思わないのだろうか。ああ、思わないからずっとこうして普通にしてられるのか。
ならば何故、この事実を隠していたのか。
恐らく、亘理は糸に触れるというだけでなく、ある程度物理法則に則って糸をその辺に引っ掛けておく事が出来るのであろう。先ほどのドアノブに引っ掛けた様に。
「一つだけ聞きたいんだけど。俺とお前の糸が繋がっている事を隠した理由は?」
「……そうやって、逆上すると思ったからですよ。」
元々、酷く平坦な喋り方をする奴だと思っていたが、今回は、今まで以上に何の感情もこもっていない様に感じた。
それを言ったら、俺もいつもの喋り方が出来ていないのだが。
「上から物を言いやがって、ふざけんなよ。」
いつもの喋り方が出来ない。
隠されたからってなんだっていうんだと、頭の片隅にほんの少しだけ残った冷静な部分が言っている。
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