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煮えたぎる頭で、亘理の顎のあたりを殴ろうとした。
亘理が身をすくめた為、当たったのは左の頬だった。
痛みに蹲るが、泣きもしないし、殴られた瞬間くぐもった声を出して以降、悲鳴すらあげやしない。
面白くない。
何が、と言われるとよく分からないけど。
「だから、……だから切りたいなら切りますって言ってるじゃないですか。」
吐き捨てる様に亘理は言った。
既に、赤くはれ始めた頬を、手で庇う様に当てながら、亘理は顔をしかめた。
「そんなに、嫌なのであれば切りますよ。所詮こんな糸に何の意味もないのだから。」
先日話をした時と同じ事を言い、亘理は立ち上がった。
それはまるで自分自身に言い聞かせている様な言い方で、強く印象に残った。
「切るとか、切らないとかそういう問題じゃねーだろ。」
じゃあ、どういう問題なのか。
あの子と繋がっていない糸等、切って欲しかったんじゃないのか。
自分でもおかしな事を言っている自覚はあった。
事実、亘理もポカーンとした表情で見上げている。
「兎に角、糸を切るかは俺が判断するから。」
後、俺と繋がってるってことを分からなくする小細工は要らない。そう付け加えた。
いざ、切るとなると、引っかかりを感じるとか、意味が分からない。
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