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4話
あれから暫く経った。
最悪な気分で朝起きる。
昨日の残りご飯を握っておいたお握りを食べ、一度寝室に戻って制服に着替える。
いつもの日課である指先の糸を、ドアノブに引っかけようとして、やめた。
もう、意味が無いのだ。
自嘲するように口角を上げてから溜息を一つ付く。
溜息をつくと幸せが逃げるというが、幸せが逃げるから溜息を付くのだ。
順番がそもそも逆だと思った。
のそのそと重たい足取りで校舎へと向かった。
◆
昼休みになった。
人ごみは嫌いだ。
下を向くと目に入るのは、糸・糸・糸。
まるで川の様に糸が伸びている。
色々な方向に伸びている場合もなくはないが、この糸のつながる先は人間だ。
必然的に人口の多い方角に向かって糸は伸びていくのだ。
だから、学食にもあまり行かない。
あの人がどこで食事をとっているのかも詳しくは知らなかった。
この糸は引き合う等ということは無いのだ。
購買でサンドイッチを購入して空き教室で広げていると、引き戸が開けられる音がした。
そちらを見ると、小西先輩がこちらを覗き込むように立っていた。
「一緒に昼ご飯いい?」
笑顔を浮かべ、こちらの返事等どうでもよさそうに入ってきて俺の目の前の椅子に腰を下ろした。
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