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それが、増える毎に、俺の事を変な目で見る人が増えて、気持ち悪い物になっていくんです。」
「ただ単に、五十嵐君が可愛いからじゃないの?」
溜息をついた。
五十嵐君はふるふると首を横に振った。
「確かに、俺の事を好きだと言ってくれる人は男女共に多いです。
でも、それがどうこうって訳じゃないんです。
なんていうか、狂ったように盲目的に俺であって俺じゃない人を盲信して他を疎かにするんです。
で、決まってそういう時は澱みが見える。」
今度は俯かず、俺の目をしっかりと見て、五十嵐君は言った。
俺は元々こういうのは得意ではない。
そっと自分の利き腕である右手に力を溜める。
「先輩、目線を動かさないか目をつぶっててください。」
「何突然。」
「いいから。」
「分かった。」
小西先輩はそっと目をつぶった。
俺は右手に集中して、そっと目の前の空間を撫でた。
五十嵐君の指から伸びた糸のぐちゃぐちゃになった塊がほんの少しだけほぐれながら彼の横から、後ろへと動いた。
五十嵐君は目を見開いた。
「澱みは、どこにある?」
「俺を試したいんですか?
……後ろですよね。」
「先輩、目を開けてもいいですよ。」
小西先輩の方を向いて言う。
小西先輩はそっと目を開くと、糸の塊に視線をずらした。
「今、澱みが動きましたよね。」
興奮したように、五十嵐君は言った。
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