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昨日よりは大分小ぶりになったものの、また今日一日で新しい糸をこびり付けているもののそれでも最初の状況よりはかなりマシだ。
一本一本取っていると、小西先輩が五十嵐君に声をかけていた。
「ケーキあるけど食べる?」
五十嵐君は俺の方をそっと見た。
昨日もそうだったけど気にしなくていいのになと思う。
苦笑い気味でどうぞと声をかけると、小西先輩に「お願いします。」と言っていた。
「佐紀ちゃんは紅茶派だよね。アイスティーでいい?」
「はい、ありがとうございます。」
作業以外の事を気にしていても仕方が無い。
俺は目の前の糸の塊に集中することにした。
それから、たっぷり2時間ほどひたすら糸をほぐした。
目の前に1本だけになった糸を確認して、ふうと息を吐いた。
その音で気が付いたのだろう、小西先輩がこちらをみて、それから糸を確認し「お疲れ様」と声をかけた。
五十嵐君も周りを見回して、澱み消えてますねと喜んでいる。
「とりあえず、一旦は元に戻せたと思います。
ただ、また明日には少しずつ引き寄せてしまうと思います。」
「そう、ですか。」
「引き寄せないような体質にするために、俺の実家に通ってもらうんですよ。」
「はい、頑張ります。」
ニコリと笑って五十嵐君は手を握った。
「今日は体のだるさは?」
「全くないと言ったらウソになりますけど、昨日よりは全然!」
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