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俺が出てきた事を確認すると、ヘラリという擬音が付きそうな笑顔を浮かべた。
しかし、その瞳はまっすぐに俺を射抜いていて、とてもじゃないが友好的だとは思えなかった。
「ねぇ、君。コレ見えてるんでしょ?」
忌まわしそうに、左手を上げながら言った。
しらばっくれて逃げようかと思った。
だが、あの絡まった人を見つめていた彼の顔がフラッシュバックするように脳内で再生されて出来なかった。
「見えています。」
苦々しい気持ちで答えた。
「ふーん。君、霊感が強いとか、そーゆぅ奴?」
「……家が縁結びの神社なんです。」
調べればすぐ分かる事だ。
観念したように俺が言うと。納得したように一度頷いた。
そんな姿も、様になるのだから美形は得だなと思った。
「聞きたい事が沢山あるんだけど、良い?」
良いと聞きながらもこれは多分拒否権が無いやつだろう。
ほの暗いその瞳にどれだけ彼が追いつめられているのかが分かる。
俺は、家族全員が見えていて、糸についての知識もそれなりにあった。
それでさえ、この糸には懐疑的なのだ。
何も知らない彼がこうやって、ジワジワと追いつめられるのも道理だ。
しかも今彼は転校生に恋をしている。
「会計様のお部屋で説明するので良いですか?」
その辺で出来る話しではないだろう。
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