2話

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そういった物が何も無い、外したアクセサリー一つ置いてない室内だった。 この、がらんどうの部屋で一人この忌々しい糸を一人で見ながらそれを外そうとしていたかと思うと、それだけで、それだけで……。 役員用の部屋は俺の部屋より広く、まるでファミリー向けという広さのリビングスペースに案内され、ソファーに座った。 「確認だけど、君これ見えてるんだよね?」 自己紹介も無く何も無くいきなり本題に入った。 この人は俺に対して何の興味も無く、ただこの糸について知りたいだけなのだというのが嫌でも分かった。 「はい、白い糸が小指から出てますね。」 「これは何?赤い糸ってやつなの?」 「うちでは縁の糸と呼んでいました。」 実家は、“縁結び”“縁切り”の神社だ。 俺は、ゆっくりと自分の知っている知識を話した。 この糸は縁を繋ぐ物だ。 生まれた瞬間から伸びている。 基本的には1対1で繋がっている(まれに複数の糸が繋がっている人もいる) 繋がる先が自分より年下の場合切れた様に先が無く、相手が生まれる瞬間にするすると伸びて繋がる。 恋愛に対する運命の糸なのかと問われれば、分からない。 糸が繋がっていない人と結婚して、幸せになっている人も沢山居るので分からない。 糸の繋がりに性別は関係ない様だ。     
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