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4.5話
◆
亘理が帰った後、リビングに戻るとあの子がニコニコと笑顔を浮かべながらこちらを見ていた。
ああ、あいつの事は癪だけど、紹介してよかった。こんなに喜んでくれるならもっと早く話を聞いてあげればよかった。
「佐紀ちゃんよかったねぇ。」
そう話しかけると、きょとんと俺の事を見上げる。
「え?ああ!!違いますよ。勿論、今日これを何とかしてもらったのも嬉しいですけど今嬉しかったのは違うんです。」
微笑みながらあの子は言った。
「俺が嬉しかったのは、お二人が優しい関係だからです。」
「ちょっ!?佐紀ちゃん何言ってるの?」
俺とあいつの関係は、ただこの糸が繋がっている。ただそれだけだ。
玄関に向かって伸びる糸を目で追いながら思う。
「え?あれ、違うんですか?」
こてんと首を傾けた姿も可愛い。
「だって、大地先輩ずっと彼の事ばかり見ていたし。」
途中で慌てて佐紀は言葉を切った。
それはまるで、俺があいつの事が気になってるみたいじゃないか。
「そんな事ないよ。だって、俺の好きなのは佐紀、君だよ。」
本当は今言うつもりはなかった。
だけど想い人に勘違いされている事だけは嫌だった。
「でも、頭の中の大部分を占めているのは彼なんですよね。」
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