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僕は昔から影が薄かった。友達と一緒に歩いていても、いつの間にか後列を歩くようになっていたり、旅行の思い出話に参加すると「あれ、いたっけ?」と言われる。
別に友達には悪気はない。悪気があるのならとっくに離れている。いや、例えそうであったとしても、僕は誰かとはぐれて、一人で生きるなんてできはしないだろう。
僕は中学校に上がった。周りは知っている人たちばかりだったけど、それでも少しさびしさを感じた。なぜなら皆、新しく出会った人たちの方に夢中になるからだ。僕の存在はますます小さくなっていった。
別に僕の周りにいる人たちは、特別な呪いをかけられて、僕のことが見えなくなっているんじゃない。僕自身にも特別な力なんてありはしない。
単純に、忘れてしまうんだ。僕がそこにいたということを。忘れられてしまうってことは、いなくなってしまうことと同じなんだと、僕はその時、ようやく理解した。
だから僕は何度も叫んだ。僕はここにいるよって。忘れないでって。
皆、その場では思い出して僕の肩をつかんでくれる。だけど、少し経つと、また僕は皆の輪から外れてしまう。
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