ボウル足湯

　大学進学を機に上京してから丸5年。一人暮らしも板について、ちゃんと自炊もするし洗濯掃除もなんなくこなす。特に不満も困ったこともなく、この6畳一間、キッチン、ユニットバス付きの自分の世界は大変居心地がよい。あることを除いては。そう、正直に言いますと私、一人暮らしを始めてから一度も部屋でお風呂に浸かったことがありません！
　別に潔癖症なわけではない。ただ、どうしてもユニットバスにお湯をはるということが受け付けない。バスタブに入った時に、すぐ横をみるとトイレの便器がみえるのがなんとなく気持ちが悪いし、手洗いのシンクの裏側のパイプの黒いさびがみえた時にはぞっとしてしまう。いくらバスタブを綺麗に洗ったってこの二つは絶対になくならないのだ。でもどうしても時々も求めてしまう。あのお湯の中に入った時のなんともいえないほっとしたひとときを。だから私は考えた。