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あの日から、私にとってお風呂は泣く場所になった。
時々、一人溜息を吐いて、“こんなもんだ”と自分を緩めて、“こんなにも大切だ”と思うなにかを知るのだ。
今、その時だと背中を押してくれるのは主人だ。私はまだ自分の限界を見誤ってしまうから。
頼り過ぎだろうか。
でもね、彼の作り笑顔を見破れるのは私だけなの。ばれるといつも悔しそうに表情を崩してね……言ってくれるの。
“ちょっとだけ、話聞いてくれる?”って。
「さっぱりした?」
湯上がり、氷たっぷりのサイダーを用意してくれる彼。今も、こんな日はやっぱりこれなのだ。
「ありがとう、しゅんすけ。」彼のノンアルコールビールにコツンと乾杯する。
息子はもうすっかり夢の中で、私達は束の間二人きりだ。
「あ、そうだ。中学校の同窓会の案内が来てたんだけど、どうする?」
「さちは?行くなら、シュンは母さんが見てくれるけど。一緒に行こうか。」
二人の母校の名前が印刷された案内を真ん中に、私達は声を弾ませる。
宛先の“柴田”の文字の下には、しゅんすけと私の名前がある。
「じゃあ、二人とも出席ね。」
「ちょっと、照れくさいけどな。」
そう言って、彼はくしゃっと笑った。
私はそんな“柴田君”に少し見蕩れたあと、出席に丁寧に丸をした。
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