きっと君は気づかない

3/8
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 お風呂で歌うのは、昔から変わらない。  五歳違いの姉弟は、小さい頃は母と父のどちらかとまとめて風呂に入れられた。湯につかるときに汽車の歌で数を数え、テレビやアニメの主題歌を歌う。五歳も違えば、当然できることも違うわけで、侑香里は割とでたらめに歌う永太が、時々許せなくなった。  君に会うはずが道を間違え、水の中はいか(・・)の中になった。さんぽは勝手に走り出し、森の小道はオリ(・・)の道になって、もうめちゃめちゃだった。  けれど、違うと怒るとたしなめられるのは侑香里だったから、すねた記憶が何回かある。  子供特有の言い間違いではなく、適当に覚えている言葉をつなげているだけ。ちなみに、かなりでかくなった今もあまり歌詞を正確に歌う気はないらしく、似たような言葉になったり、全然違う作詞をしたりと忙しい。が、間違う割合は減っていた。  知っている曲だと、つい訂正したくなる。それでも、最近はまたかと受け流せるようにもなったから、どっちもそれなりに成長していた。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!