第一話 混沌カオスの世界

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2040年5月、東京都江戸川区。 人影が消えた荒川の河川敷に大きな夕日が沈もうとしていた。 閑散とした河川敷には転々と配置された電線が敷かれ、 明らかに違法だとわかる大きな街頭スピーカーが 括り付けられている。 いきなり街頭スピーカーから大音量で反政府応援歌が流れ出し、 続いて女性の甲高い声でアナウンスが始まった。 「反政府同盟の同志の諸君に告ぐ! 今晩、18時より新錦糸町駅前にて、政府弾劾デモ行進を決行する! 同志諸君の多数の参加を求める! 政府を倒し、格差を無くし、平等な社会を築こうではないか!」 2040年の首都東京は、歴史上かつてない混乱を見せていた。 経済格差は一層激しくなり「富める者」か「貧しい者」かという、 極端な2極化に陥っており、さらに少子高齢化が進んだ日本では、 日本国籍を取得した外国人の人口が50%を占めるようになっていた。  日本政府は社会情勢の混乱を防ぎ、治安維持を行うため 自衛隊よりも強力な武力を保有した、公安警察機動部隊を設立。 外国人犯罪防止のための法整備も行っていた。  さらに、政府は政治的な判断を人間に頼るだけではなく、 「ミカドA.I.」というスーパーコンピュータを利用し、 膨大な蓄積されたビッグデーターをフルに活用しては、 国民の動向を逐一チェックできるようにしていた。  日本政府が目指していたのは、政府による「完全なる」監視社会の 構築であり、国民支配を徹底することにあった。  万が一、政府に対するデモや過激な抗議活動が行われたならば、 政府は国家公安委員会を通じて、人型ロボット兵器を有する 公安警察機動部隊がいつでも出動できる体制を整えていたのである。
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