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第5話 脳圧臨界
凛花の立場は日に日に悪化していった。生徒、いや学校全体にとって、破壊の能力を持った異質を受け入れるのは荷が重過ぎたのだ。
どうしようもない憤懣の小爆発が思わず漏れる程度だった陰口は、本人がまるで気にしないでと分かると横行するようになった。
彼女は何も変わらない。そのように見える。ただ、何かを堪えているのか、頭を抑えることが増えた。
だが扱いの悪さで言えば定の方が酷い。何故だか知らないが、いやなんとなくは分かるが、定は完全に凛花の子分扱いされていた。そして彼らの中ではなんの変哲もない雑魚人間の定は、同じクラスの被害者同士のくせに超能力者に取り入る生意気な奴となってしまった。
まこと勝手なことであるが、正義感というものは度し難いものであって、しかも潰されないよう狡猾に首を突っ込むj。将がたおせないならまず馬からだと物理的な嫌がらせが集中したのだった。
机の間を歩いていると、どこかから足が出て脛を打つ。鈍い痛み。クラスから忍び笑いが漏れた。
やったのはスマートで物怖じし無さそうな面の男子。名前は覚えていない。ほとんど人と話さずに生活していたので、夏休み前までは顔と名前が一致しないのが常だった。
「だっせ」
名も知らぬ男子が呟く。
「そうだな。それに顔に似合わず意気地の無い」
返されると思わなかったか、まじまじと定の顔を眺めた後、かっと額が赤くなる。
「てめっ」
「図星をつかれたら黙って聞け。ためになるだろ?」
「何が、お前だって、あの女の尻にくっついてよ」
「じゃあ言ってやろうか?どこそこのアホがあなたのこと馬鹿にしてましたよって」
声に詰まる。当然だ。結局は憂さ晴らし。決闘に向かう気概など無い。気持ちは分からないでもないがそれが自分に向けられれば反撃もする。
彼らは定がクラスから排除されることを恐れていると誤解しているが、違う。定が恐れているのはもっと大きな、人類そのものからの排除であって、最悪学校からはじき出されても構わないと思っている。もちろん困ったことにはなるが、自分の力を隠し続けてきた彼にとって、露見しないよう代償を払い続けるのは呼吸に等しかった。
忍び笑いは消え、敵意だけがくすぶっていた。定は席に座ると、昼飯は何にするか思索にふけりだした。
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