2490人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
「29分。まあ、こんなものだな」
晃は満足そうに言うと、後かたずけを始めた。
「はい…。本当にありがとうございます。一人だったらあと2時間は覚悟してました」
しゅんとして言った結花に、
「お前とじゃ、まだまだ経験が違う。ほら、帰る準備しろ。飯行くぞ」
「はい……。え!飯??!!」
結花はしょぼんと返事をした後、驚いて声を上げた。
「お腹空いてないのか?」
きょとんとして言った晃に、
「空きました!とっても!」
そんな結花を見て、晃はクックっと肩を震わせて笑うと、
「お前、なんか小動物みたいだな。本当に食べることになると目の輝きが違う」
肩を揺らす晃の言葉に、
「違い……」
(主任とご飯に行けるからなんて、言えないか……)
言いたかった言葉を飲み込むと、
「小動物って……。複雑です……。けなしてますよね?」
拗ねたようにいった結花に、
「まあ、いいじゃん。可愛い後輩に奢ってやるよ。何が食べたい?」
そう微笑んだ晃に、結花はドキッとして慌てて目を逸らした。
「うーん、パスタ!パスタ食べたいです!」
「OK!じゃあ、隣のイタリアンでいいか?」
「はい!」
(いいもん。今は近くにいられるだけで。こうやってこっそりと主任を見られるだけで幸せ)
チラリと隣の晃の横顔を盗み見ながら、結花は幸せを噛み締めた。
最初のコメントを投稿しよう!