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「でも本当にどうして今まで1度も告白しなかったの?」
千香は今更だけど……と不思議そうな表情を見せる。
「だって、初めて会った時には、主任には同じ大学の同級生の彼女がいて、追いかけて入ったら明らかに好きな人が……いたじゃない」
「ああ、好きな人って塔子主任?」
千香も、納得の表情を浮かべると結花を見た。
塔子主任と言うのは、晃の前の海外事業部の主任で、晃の同期だ。
美人で、結花のようなアシスタントではなく、海外事業部初の女性管理職についた仕事の出来る人だ。
「見てすぐにわかった。ああ、あの人が主任の好きな人だって……。そして塔子主任相手じゃ勝てる気しなかった」
結花は箸を置くと、小さくため息をついた。
「まあ、勝てないわね、塔子主任みたいな完璧な人が相手じゃ」
「千香!さっきからちょっとひどくない?」
その言葉に、千香はクスリと笑うと結花を見据えた。
「でも今がチャンスじゃないの?樋口主任……」
千香の言葉の意味は結花にもわかった。
晃がずっと思っていた塔子はこの春、結婚と同時に渡米してしまった。
「だからと言って、すぐに私を見てくれるわけないでしょ?」
呟くように言った結花に、千香は「結花!」と大きな声を上げた。
「ねえ?本当にそれでいいの?こんなに長い間拗らせに拗らせた恋に決着をつけるチャンスじゃないの?どうであれ、今が頑張り時でしょ!」
「そうだよね。何もしなければ始まらないよね……」
そんな千香の言葉に、結花は覚悟を決めたように頷いた。
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