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どこか遠くの王国に、横暴な王様と我儘な女王様が住んでいました。
王国の人々を見下し、華やかな宮殿で毎日紅茶を飲みます。一生懸命に国民が作った食べ物も、お金も全て。王様と女王様のケーキやドレスに変わってしまいます。
だんだんと、国民の不満が高まってゆきます。宮殿の人々の生活に疑問を持ち始め、反抗するようになりました。
最初は小さな炎でしたが、あっという間に膨れ上がり、国民全員、王様と女王様の言うことを聞かなくなりました。
恐ろしいたくさんの怒鳴り声が宮殿にも届いてきます。時折、叫び声や泣き声も聞こえてきます。
王様と女王様の娘、リーシャは、その時四つ。毎日ベッドの中で震えていました。いつも部屋に一人ぼっちで、絵本やぬいぐるみで遊んでいました。
でも夜には、女王様は疲れた顔で、優しく子守歌を歌ってくれます。リーシャの大好きな時間でした。
ある日、王様と女王様は、知らないこわい人と一緒に、リーシャの部屋へやって来ました。
「リーシャ、おいで」
王様と女王様と手を繋いで、リーシャは初めて宮殿の外へ出ました。青い空の広がる日でした。
王様と女王様はリーシャにキスをして、「愛しているよ」と、どこかへ行ってしまいました。
しばらくして、大勢の人が歓声を上げて騒ぎだしました。「自由万歳!」と、皆が声を揃えます。
リーシャは乱暴に背中を押されて、嫌々歩きます。たくさんの目が上からリーシャを睨み付けました。途中、誰と目があっても、嫌な言葉を浴びせかけられます。
少し小高いところに連れてこられました。リーシャの目の前の地面には不思議な模様と、ろうそくが立っています。
「これより刑を執行する。罪人は魔方陣へ」
突き飛ばされるように、リーシャは不思議な模様の中へ。
そして真っ白なローブを着た痩せた老婆が、何かを言って手を動かします。
途端に、リーシャの身体はむずむずとして、ばきばきと形を変え始めます。真っ黒な、大きな、"何か"へと。
悲鳴が上がりました。大勢の人が、不快そうに顔をしかめています。
指を動かしただけで来るなと言われ、歩いただけで気持ち悪いと叫ばれました。
その姿は、まるで蟻の怪物。
悪魔のようなその姿は、嫌悪の象徴として、新たな王国の差別の対象になったのです。
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