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他人との共同生活など絶対に無理だと、自他共に認めていた私が、母親が死んで三年。初めて、他人との同居に踏み切った。この私が、だ。
同居相手は中学に上がるころからの友人だから、かれこれ付き合いは二十年以上になる。
「ただいまー」
ドアベルが鳴って、同居人が帰宅する。
「おかえり、早かったね」
「うん、ゲームの続きが気になって。ねぇ、そろそろ店閉めるしょ? お風呂沸かしとくね」
「ありがと。夕飯、希望ある?」
「特にないー。お腹すいたー」
とんとんとんと、軽快な音を立てながら店奥の階段を上っていく。その背を目で追いながら、ふっと口元が緩んだ。
中学生の時に、父が単身赴任で家を離れた。
高校卒業前には、兄も就職して家を出て行った。
母親と二人になると、父が戻ってくるとき以外、お風呂を沸かすことも無くなっていた。
母が死んで、家にひとりになったら尚更、シャワーで済ますようになった。
ひとりだと光熱費が勿体ないし、なにより面倒だと思って。
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