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「そっちのお前、名前は?」
「宮坂……です」
「フルネーム」
「宮坂、春……春紀……です」
「ふんふん。ハルキって読むのか。なんだ、腹減って力出ないのか?」
名前を確認した途端、先輩の声が優しくなった。そのせいか、「腹減って」の言葉にか、宮坂は「ハッ」となって、すかさずお腹をさすりだした。
「あの、お腹痛くって……」
こいつ、先輩にも仮病使う気だ。なんてずる賢いんだ!
宮坂のやり方にますます呆気に取られていると、先輩がいきなり宮坂に突進した。突進したってのは大げさだけど、そんな勢いだった。俺もビビったけど、宮坂は「ヒッ!」って声を上げ、全身の毛を逆立てた猫みたいにビクッとなった。
「大丈夫か? 熱でもあるのか?」
大きなグローブみたいな手が、宮坂の顔半分を隠す勢いでベチャッと当たる。
あんなのに叩かれたら鼻が潰れちゃうよ。
宮坂も相当ビビってるようだった。ベッドの上、後ろ手で体を支えたまま硬直してる。先輩は宮坂の顔半分を触りながら言った。
「ん? うーん……よく分からんな。よし、保健室に先生が居るかもしれないから、俺が連れてってやろう」
「あっ、や……大丈夫です! 寝てたら良くなるから……」
あたふたしてる宮坂。
「遠慮するな」
ゴリラ先輩は宮坂の足の下に丸太のような腕を入れると、軽くヒョイと横抱きにしてしまう。
「って……ええええっっ!」
あーあ……。
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