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華奢な宮坂は、女の子みたいに抱えられちゃってる。まさしくお姫様抱っこ。悪いけど違和感はひとつもない。
呆気に取られつつ感心して眺めていると、宮坂は俺と先輩を交互に見て、俺へ思いっきり視線で助けを求めてきた。
そうだった。感心してる場合じゃない。
俺は慌てて、ぶっとい腕にビビリながら、宮坂をお姫様抱っこしたままドアを開けようとする逞しいゴリラ先輩へ言った。
「あ、先輩。あの、俺が持ってる胃薬をさっき飲ませたんで、きっともうすぐ痛みも治まると思います。ちゃんと二人で六時までには一階へ行きますので、大丈夫です!」
「ん? そっか……それは残念」
先輩は宮坂を俺の横に下ろすと、今度は俺の顔をマジマジと見てきた。
な、なんなんだよ。この人。
「お前は、松平……リョウでいいの?」
「あ、はい。そうです」
「うんうん。二人共、部活は? もう決まってるの?」
「あ、俺、僕は、バドミントン部に……中学もバドミントンだったんで……」
「お、俺も! 小学校から!」
いきなり宮坂が俺の言葉に乗ってきたから、「え?」と思ったけど、顔に出さずに先輩へウンウンと頷いた。
「そっかぁ~。決まってなかったら二人に柔道部のマネージャーやって欲しかったのになぁ~」
柔道部……考えただけで汗臭そうだ。
「あは、ははは……すみません」
「じゃ、とりあえず、二人とも六時までに降りてこいよ」
「分かりました」
「はい! 六時に!」
人が変わったように、やけにキビキビ答える宮坂。敬礼でもしそうな勢いだ。相当怖かったらしい。
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