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ドアが閉まってしばらくジッとしていると、隣の部屋へのノック音と、突撃訪問している声が微かに聞こえてきた。隣の部屋のドアが閉まる音。
ほぁ~……ビビった~……。
身体の力を抜いた途端、今度はバッ! と覆いかぶさるように宮坂が俺に抱きついてきた。
「わっ!」
「助かったぁ~……、ありがとおっ! 凌君!」
へぁ? リョ、凌君?
気の抜けた声と共に、抱きついてきた腕で、ぎゅうぎゅうと締め付けお礼を言ってくる宮坂。
「あ、いや……ちょっと怖かったよな。あの先輩」
宮坂は腕を離すと、ガクンと床に落ちるように腰を下ろし天を仰いだ。
「ちょっとどころじゃないよ、俺は頭から食われるんじゃないかってもうヒヤヒヤだったんだから」
「あはは……全寮制だし? 笑い事じゃないよな。なんつって」
「あれ、ホント人間? クマだよクマ。完全に獣だよ」
「あはははは! クマは酷いだろ。ゴリラじゃね?」
「もう、どっちでも一緒だよぉ」
焦って、ジタバタして、ホッとして脱力して、喜んで、喜怒哀楽が激しい宮坂は話してて面白かった。頭の回転が早くて、ずる賢い奴だって思ったけど、案外いい奴なのかもしれない。それに、まさか同じ競技をやってたとは。
「でも、バドミントンやってたなんて奇遇だね。嬉しいよ。同じ部活なん……」
「やってないよ。俺、野球っ子だもん」
「……はぁ?」
しゃーしゃーと言って立ち上がった宮坂は、思わず声をひっくり返した俺を完全スルーして、またベッドにドサッと座り携帯でゲームを始めた。
……やっぱ助けなきゃ良かった。
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