四、即興一発芸

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 高田先輩がチュウする二人をよそに雑誌を開き「うおおお」とか興奮した声を出す。そして雑誌をクルクルと丸めると、ジャージの股間部分にグイッと収めた。くっきりシルエットにみんなが爆笑。  夏樹先輩がキスから元の体勢に戻り、高田先輩の股間を凝視して目を見開いた。森村先輩は男らしいキスの後、ふにゃふにゃして夏樹先輩の肩にスリスリと頬ずり。本人もきっと自分の役どころを掴みきれていないんだろう。  夏樹先輩はその森村先輩をドンと押すと、王子タスキを肩から外し森村先輩に掛け、巨大な股間の高田先輩に「付き合って!」と抱きついた。森村先輩は「アンビリーバボー」と一言。三人で手を取り合い訳の分からないメロディを歌いながら俺達一年生にお辞儀をした。  微妙な拍手がパチパチと起こる。俺も一応拍手に参加した。手を叩きつつも、きっと誰よりも楽しんだであろう凌君を再度チェック。凌君は曖昧な笑顔で拍手しながら夏樹先輩ばかり見つめていた。  いや、……見とれてるというべきか? え? ええ? そうなの? そういうこと? いやいや、まさかぁ~。  俺は自分の直感を、首を振って否定した。  高田先輩、夏樹先輩、森村先輩は繋いだ手を離すと、真ん中の王子役をしていた夏樹先輩が一歩前へ出る。 「ということで、新入生の諸君、今夜は入寮祝いのイベントに参加してくれてありがとう。あ、自己紹介が遅れました。僕は三年F組の夏樹雅也です。一応寮内の風紀チェック担当してます。どうぞヨロシク」  風紀担当が率先してやる内容かよ。とも思ったけど、まぁ……それだけココの風紀は厳しくないんだろうなと安堵した。
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