四、即興一発芸

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 食べていると高田先輩がコの字の端っこに近づいた。 「こっちから自己紹介な。真ん中に立って名前の紙をみんなに見せて、一発芸か一発ギャグしたら席に戻ってよし」 「えーー。マジかよ~~」  みんなが一斉にボヤキ始めた。俺もガックリ頭を落とす。  甘かった、完全に甘かった。名前を言って終わりだって? よくゆーよ。まさかこんな罰ゲームが仕組まれていたとは……。 「これは社会人になったら、歓迎会で絶対やらなきゃいけないことだ。その時の訓練と思え。はい。そのテーブル。じゃんけんして順番決めろ。次は隣の島のテーブルだからな。順番決めとけよー」 「あーあ。マジかよー」 「じゃんけんしようぜ」 「最初はグッ!」  高田先輩側のテーブルから次々とじゃんけんが始まる。 「島は基本的に相部屋の人間と同じはずだ。相部屋の人間と二人ひと組でもいいぞー」  なに? 初めての共同作業? ここで同じ赤っ恥をかきあって、絆でも深めろって事? 大きなお世話だよまったく。  手の中のサンドイッチをグイグイ口に押し込んで、お茶で流し込む。  凌君が他の四人を見て、俺に視線を移し口を開いた。ちょっと困った表情。 「……どうする? 二人ひと組になれば恥をかくのもちょっとはマシかもしんないし、組む?」 「うーん、まぁね。じゃぁ、ネタは?」 「ネタ……うーん……」  凌君はポケットをパンパン叩いて「あ」って表情になる。ジャージのポケットから取り出したのは、何故かトランプだった。
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