四、即興一発芸

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 いよいよ俺達の番だ。凌君と俺はコの字の内側センターに立つと胸の前で名前の紙を持ち、ヘコリと頭を下げ自己紹介した。凌君がおもむろにポケットからトランプを出して、みんなに見せる。 「えー。引いてもらったトランプの数字を当てます」 「おおー」  一応どよめいてくれる会場。  凌君は、「では、相方の宮坂君にトランプを切ってもらいます。宮坂君、よく切ってください」と俺にトランプを渡した。  俺はよく切ったトランプの束を扇状に広げ、目の前の一年に一枚引かせた。凌君だけに見えないように、みんなに見せたカードはダイヤの八。そのトランプを束の一番上に置き、もう一度トランプをざっくりと切る。そして切ったトランプを凌君へ渡した。凌君はそのトランプを扇状に広げ、一枚のカードを抜き取ると自信アリアリの表情で声を張り上げた。 「引いたカードは、スペードの十二!」 「ちげーし!」  みんなうっすら笑って、ツッコミを入れてくる。後ろで見ていた数名の二年、三年生も失笑してる。よしよし、いい感じ。  俺が扇状に広げ、俺がシャッフルしてるから、当たり前だけど、凌君は三回やって全部を外した。「なんなんだよ。グダグダ過ぎるだろ」とブーイングまで出る始末。 「宮坂行きます!」  いたたまれなくなったって風を凌君が演じ、手を挙げ名乗りでた俺とタッチ交代。  さぁ、ここからだ。
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