一、一〇六号室

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 宮坂は目を糸みたいに細くしてクシャッと変な笑顔を作った。いきなりのクシャ顔にビックリしていると、握手している手と反対側の手で、今度は肩をパンパンと叩き揺すってくる。  肩を叩かれて、「え? え?」と戸惑っていると、ユサユサ揺すられて更にビックリする俺。  宮坂は握手を解くと、床に置いたバッグを手に取り肩に掛けた。小さなダンボールを抱え、こちらを振り向く。 「待ってたの。どっちにする? 右? 左?」  相部屋はドアを開くと、正面に南向きの窓。その上にエアコン。入口の右側に風呂場。左側に洗面所とトイレ。  部屋の真ん中を境に左右シンメトリで、クローゼット、ベッド、勉強机が並んでいる。ベッドの下も物が収納できるようだ。 「あ……俺は、出来れば右がいいけど……でも、どっちでもいいよ?」 「右ね。んじゃ、俺、左行くわ」 「え、いいの?」  宮坂は快く俺に右側スペースを譲ってくれた。  部屋の左側の勉強机にダンボールをデンと置く。次にベッドへ旅行バックを置き、ドサッと勢いよくベッドに乗ると荷解きを始めた。  チャカチャカと手際よい動き。ポカンと見ているうちに、荷解きはあっという間に終わってしまった。五分もかかってない。ものの二、三分?  ダンボールから出てきたのはノートパソコンや外付けハードディスクやらケーブル。ヘッドホン。ゲーム用コントローラー。数冊の本。のみ。  え……服とかは? 下着とか、部屋着とか、そういうのは?  俺は疑問を抱きつつ、大きな旅行バッグをベッドの上に置いて、積まれたダンボールの前でこれを開けていいものかと躊躇した。
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