二、宮坂という男

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 服以外の荷物をなんとか整理して、空になったダンボールを畳む。  ダンボールは……一階へ持っていけば資源回収なんかの時に使うかも?  ダンボールを脇に挟み、ドアを開けようとした時だった。コンコンとノックの音。と同時に返事する間も無く、ドアがガチャッと開いた。 「おーーい、二人揃ったか?」 「あ、はい……」  一歩部屋に足を踏み入れてきたのは、明らかに上級生って感じの厳つい男。  なに……デカすぎない? ドアのかまちに頭がぶつかりそうだ。  二メートルくらいある背丈。プロレスラーかゴリラみたいなゴツイ先輩は、ちょっと頭を下げて部屋の中にズイと入ってきた。俺と宮坂を見て、持っているファイルに何かチェックを入れる。  気付けば宮坂も、寝転がっていたベッドから起き上がり、へたりと女の子座りして地味に小さくなってる。俺の時は「待って~」と言っていた携帯のゲームもさすがに止めたらしい。  部屋の空気が急にムワッと男臭くなった気がする。  先輩の顎にはうっすらと不精髭も生えているし、握っているボールペンは綿棒くらいの大きさに見える。きっとグーパンチ一発で俺たちなんてあの世行きだろう。  二年後には俺もこの宮坂もこれくらいごつくなっているのか……それはないと思いたい。  先輩は顔を上げ、俺と宮坂を一瞥するとゆっくりと言った。 「二人共六時までに、一階へ降りてこいよ」 「あ、はい」 「はぁい……」 「時間厳守な」  ビシッとした声に思わず背筋が伸びる。 「はい!」 「はぁい……」  宮坂の返事は二回とも蚊の鳴くような声だった。先輩はその返事が気に入らなかったのか、宮坂をジロリと見た。
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